isiusのブログ

枯野にて黙考

髪を切る

髪を切ろうと思ったのは金曜夜だった。

それならば、ちょっと離れた商店街の、酒屋の2階にある美容室に行こうと。

美容師さんにハズレがなく、窓からの景色も程よく、欧州のテクノミュージックなど流れていて居心地が良い。

目を瞑って髪を切ってもらっていると、粉雪の降り積もるような音がした。2月あたりの真夜中に聞いたことのある音。静かな、なんだか幸福な気分のまま我にかえると、その音は髪の毛がケープに落ちる音だった。鋏の音はほとんど聞こえなかった。

あんなに優しい散髪は新鮮だった。


予約のために電話をかけると「この番号は現在使われておりません」などと仰る。

キャリアを換えても、固定電話から掛けても同じ。

あの癒しに再会は叶わぬのか、と思ったら、もうどんな店でもよくなってしまった。

「振られてやけくそ」な気持ちに似ている。

徒歩圏にある店を探して行ってきた。髪型は相談する体で美容師さんに大筋で任せた。鋏の音だのBGMだの違いを感じた。完璧に振られメンタルだ。仕上がった髪型に不満は無いが、鏡を見るたび経緯をまるごと思い出してしまう。


そして今更。かの美容室が名前だけ変えて、場所も経営者も変わらず営業しているのを知った。「あの子は…ずっと待っていたんだよ」とかいう感じだ。


嬉しいが、ちょっとがっくりしている。


服を捨てたい

捨てたい、というか持っているのが煩わしくてしょうがない。

服を着ると何らかの汚れが着くので、洗濯機を所持しなくてはならない。

洗濯すると干す場所と時間を確保しなくてはならない。

洗濯物が乾いたら、畳んで片付けないと何かと邪魔くさい。

これだけの仕事を発生させる服を、複数所持して生活している。なんなんだ仕事中毒か。


しかも季節で入れ替えを要する。

夏場にフリースなど見たら、暑苦しくて最悪の場合死ぬ。


人間は不便だ。

全裸でメシ食ってる犬猫は潔いし可愛い。